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アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー年をとると誰もが、人の名前をすぐに思い出せなかったり、ものをどこにしまったか忘れたりするものです。認知症は、そのような加齢によるもの忘れとは違って、正常に働いていた記憶や思考などの機能が低下します。脳の病気や障害によりこの脳の機能が低下し、日常生活に支障を来たした状態です。具体的にいうと、数分前、数日前の出来事を思い出せない、新しいことをおぼえられない、日付や曜日がわからない、言葉が出てこない、家事や仕事の要領が悪くなる、家電製品を上手く使えないなどの困難が生じて、以前のように日常生活を上手く送ることができなくなります。

認知症にはいくつかありますが、一番多いのが「アルツハイマー型認知症」です。1907年、ドイツのA.アルツハイマー博士が初めて報告した病気で、脳の神経細胞の数が徐々に減少して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。特徴は、記憶の低下を含めた認知障害のため生活に支障をきたす、ゆっくりと悪くなる、麻痺などの局所神経徴候がない、などで、男性より女性に多くみられます。

報告にもよりますが、次いで多いのが「レビー小体型認知症」や、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による「血管性認知症」で3大認知症といわれています。かつて日本では、血管性認知症が多かったのですが現在減少傾向です。またアルツハイマー型に血管性認知症が合併した混合型認知症の患者さんも多くみられます。

皆さんのご想像通りかとは思いますが、年をとるほど、認知症になりやすくなります。2013年の厚生労働省の研究事業によると、65歳以上の約16%が認知症であると推計されています。また80歳代後半であれば男性の35%、女性の44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症であることが明らかになりました。なお日本は世界一の長寿国であり、2015年の同省研究事業によると、2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になるものと予測されています。

認知症の初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。しかし、意欲の低下や、被害妄想、話が通じなくなった、怒りっぽくなった、金銭や服薬の管理が難しくなった、外出すると迷子になる、などのサインが出てきたときには、認知症の可能性がありますので、専門機関に相談してみると良いでしょう。

アルツハイマー型認知症のように、お薬で症状の進行を遅らせることができるタイプの認知症もありますが、現在の認知症医療においては、介護やケアも重要な要素とわかってきました。まずはどのような病気かを知ることで、理解が深まることもありますので、お気軽にご相談下さい。

TOPIC:軽度認知障害MCIとは

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、アルツハイマー型認知症などの認知症の前段階として注目された概念で、軽度の認知機能の障害があるものの、一般的な家庭生活、基本的な社会生活機能には顕著な障害がみられない状態をいいます。ここから認知症状態に進む方は年に5~15%、正常なレベルに回復される方は年に16~41%といわれています。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症は、少し前のことに関する記憶力の低下で始まります。この記憶力の低下は「最近のことを忘れる」から「昔のことを忘れる」というように変化します。そして日付や曜日、居場所がわからなくなる見当識障害や、料理など頭でプランを立てそれを遂行することの要領が悪くなる実行機能障害、判断力低下、言葉の出にくさなどの「中核症状」がみられます。
これに対し、ものを盗まれたと主張する被害妄想や、ライラして怒りっぽいなどの症状は「行動・心理症状BPSD」とよばれます。「行動・心理症状」はかつては「周辺症状」と呼ばれていました。

なお「中核症状」はほとんどの方にみられますが、一方、「行動・心理症状(BPSD)」は、すべての方にみられるわけではありません。環境やご家族の接し方によって、強くなったり、弱くなったり、場合によっては消えることもあります。

中核症状
  • 同じ話や質問を繰り返す
  • 数分前、数時間前の出来事を忘れる
  • 鍵や財布を置いた場所を思い出せない
  • 日付や曜日がわからなくなる
  • 近所で道に迷う(失認)
  • きちんとお薬を飲むことができなくなる
  • 目的にあった買い物ができない(実行機能障害)
  • 家電などが使えなくなる(失行)
  • 季節にあった服装を選ぶことができなくなる
  • 言葉が出ない(失語)
行動・心理症状
(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)
  • イライラしやすく些細なことで怒りっぽい
  • 自分のものを誰かに盗まれたと主張する(もの盗られ妄想)
  • 誰もいないのに、誰かいると言う(幻覚)
  • 屋外に出て歩き回り迷ってしまう(徘徊)

なお、これら症状からご自宅に引きこもりがちになると、活動低下からの食欲低下、日中横になりがちで夜の不眠、といった悪循環につながります。デイサービスなどを利用することで定期的な外出を心がけましょう。生活のリズムが整い、夜にしっかり眠れるようになり、また人と会うことで生活に張りが出ます。

TOPIC:年齢相応の「もの忘れ」とそうでない「もの忘れ」の違い

もの忘れには、年齢相応の正常なものと認知症で出やすいものがあります。認知症に気づくためには、次のような目安が役立ちます。

  • 「もの忘れの範囲が一部か全体か」
    例えば「朝ごはんのおかずが思い出せない」などの経験の一部を忘れるのは正常の範囲内です。しかし、「朝ごはん自体食べたことを忘れてしまっている」といった、経験全体を忘れるのは認知症のサインといわれています。
  •  「もの忘れのせいで日常生活に支障をきたしているか」
    テレビで見た俳優の名前が思い出せないなど、日常生活でさほど重要ではないことが思い出せないのは正常の範囲内です。しかし、大事な約束を忘れてしまうなど、日常生活に支障がある場合は認知症のサインかもしれません。
  •  「ご本人が忘れっぽくなったことを自覚しているかどうか」
    意外なことに、ご自分でもの忘れの自覚がある場合は正常の範囲内のことが多いです。むしろ、ご自身で忘れていることに気づかず、話の中で話題をとりつくろうことが増えてきた場合は認知症のサインかもしれません。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の方の脳では広く神経細胞の脱落がみられますが、特に記憶と関係が深いと考えられているアセチルコリン作動性神経細胞に顕著な変化がみられます。進行するとアセチルコリン系以外にも、ドパミン系、ノルアドレナリン系、セロトニン系も障害を呈するようになります。はっきりした原因はいまだにわかっていませんが、これらの細胞脱落の病因・病態に関与した知見としてアミロイドβ蛋白やタウ蛋白をはじめとして、アポリポ蛋白、免疫・炎症性要因、小胞体ストレスなど様々な要因が報告されています。

アルツハイマー型認知症の治療

認知症の治療を早期に開始する事の利点の一つに、治療しなかった場合に比べて症状の進み具合を遅らせることができる、ということがあります。その結果、「ご本人らしく過ごすことができる時間」「旅行などご家族と一緒に楽しむ時間」「ご自分での意思決定のできる時間」が増えるといったメリットがあります。
認知症の治療には、「薬物療法」と「非薬物療法」があります。認知症を完全に治す治療法はまだありませんが、できるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。
なおご家族が、疾患についての今後の見通しや、対応の仕方を身につけることは、ご家族自身の安心につながるだけでなく、巡り巡ってご本人さんの安定化にもつながります。そして結果として介護負担が減少するといった、好循環が起きることもありますので、日常お悩みのことは医療者に聞いてみると良いでしょう。

薬物療法

アルツハイマー型認知症の治療薬は現在、わが国で使用可能なものは4種類ありあす。コリンエステラーゼ阻害薬(3種類)とNMDA受容体拮抗薬(1種類)です。いずれも有効性を示す科学的根拠があり、日本神経学会のガイドラインなどでも使用するように勧められています。

  1. コリンエステラーゼ阻害薬
    アルツハイマー型認知症では、脳の中のアセチルコリンという神経伝達物質が少なくなることが知られています。この薬はアセチルコリンの量を増やす働きがあります。
  2. NMDA受容体拮抗薬
    NMDA受容体はグルタミン酸という神経伝達物質の受容体の一つです。病期が進行すると、脳の中でグルタミン酸放出が増えることなどによりNMDA受容体の活動が活発になり、神経細胞が障害されますが、このお薬は受容体の働きを適度に抑えることで神経細胞へのダメージを減らす働きがあります。
中核症状への治療

中核症状に対しては、上記のお薬を用います。進行を完全に抑えるものではありませんが、進行を遅らせることを期待します。

行動・心理症状(BPSD)への治療はまず非薬物療法を

行動・心理症状は中核症状よりも介護者の負担になることが多いものですので、即効性を求めるお気持ちはよくわかります。ただ、お薬の中には、認知症の症状をかえって悪化させるものもありますので、まずはお薬に頼らず、患者さんご本人の認知機能に応じた、ご本人にあった対応をされると良いでしょう。例えば、簡単でわかりやすい説明を心がけたり、病気ゆえにつじつまの合わない話をしていても叱ったりせず耳を傾ける態度をとるだけで大きく変わることもあります。また環境を急激に変えない、規則正しい生活なども重要です。こういった非薬物療法で改善がみられず、ご本人・ご家族の生活に大きな支障が起きてしまっているような場合に、やむをえずお薬を用いることもあります。

非薬物療法

認知症治療のうち、薬物療法以外のものを指し、認知機能の改善のみならず、行動心理症状や日常生活機能の改善も目指すものです。
代表的なものとして、認知機能訓練、認知刺激・リアリティオリエンテーション、認知リハビリテーション、運動療法、音楽療法、回想法などがあります。

2017年の認知症疾患診療ガイドラインによると、非薬物療法の治療効果は、患者さんご本人の嗜好や実施者の力量に大きく左右されるため、治療法の優劣を決めることに意味は乏しく、患者さんご本人が進んで参加できることが大切で、必要に応じて複合的に行われることが望ましいとされています。

なお上記療法以外にも、「人と接する機会を増やすこと」「生きがいや趣味、楽しみ持つこと」「ご本人に役割をもってもらうこと」は、人とのコミュニケーションを通じて心身を活性化し、社会性の維持に役立ちます。またご本人が失敗せずできることがあれば、それはご本人にお願いしてみましょう。「ありがとう」という感謝の言葉はご本人の自信につながります。なお引きこもりの悪循環から脱するためには、介護保険のデイサービスを利用することをおすすめします。介護者の方も日々の介護から離れて、ご自分が楽しめる時間を持つことが大切です。

ご家族へのメッセージ

医療者が病気の進行具合と治療効果を判断する上で、ご家族の日々の観察はとても貴重な情報源です。最近、できなくなったことや症状の変化、お薬で変わったことなどがあれば、メモにまとめておくとスムーズに伝えることができます。受診時に受付で渡して目を通してもらうなども良いかもしれません。
介護者の方もまた、ケアされるべき存在です。介護による燃え尽きなどを予防するためにも、介護のお悩みに関してもお気軽にご相談頂ければ幸いです。

TOPIC:利用できる社会資源

地域包括支援センターを活用しましょう。地域包括支援センターはご高齢の方の介護・健康・福祉・医療生活に関する総合相談窓口として、地域の様々な資源と結びつくためのお手伝いをしてくれます。

  • 介護保険の申請(要介護認定)
  • ケアマネージャーによるケアプランの作成
  • デイサービス(通所介護)
  • ショートステイ(短期入所生活介護)
  • 訪問看護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 介護保険による住宅改修
  • 成年後見制度の活用

介護保険サービス以外にも、ご本人とご家族の助けになる社会資源として、自治体では下記のような様々なサービスを提供しています。地域によって異なりますので、ケアマネや地域包括支援センターに聞いてみましょう。また地域のボランティアやNPO法人、民間企業などが提供しているサービスもあります。

・配食サービス
・外出支援サービス
・徘徊見守ネットワーク
・ご家族の留守中の見守りサービス
・訪問理容・美容サービス
・日常生活自立支援事業
・寝具の乾燥・洗濯サービス

なお、認知症のご本人やご家族は孤立してしまいがちですが、経験をわかちあえる場、心の支えとして、「家族会」があります。お住まいの地域の家族会に関する情報は、ケアマネージャーや地域包括支援センターに聞いてみるのも良いかもしれません。

 

※上記でお困りの方は、JR埼京線、北戸田駅前の心療内科・精神科・メンタルクリニック、北戸田駅前まつもとクリニックまでお気軽にご相談下さい。

戸田市・蕨市・さいたま市南区からアクセス良好で通院がしやすい場所にあります。また外環下の国道298号から近く、17号バイパスも比較的近いので、川口市や桜区、和光市や朝霞市の方のお車移動も便利です。

参考文献
認知症疾患治療ガイドライン2017(医学書院)
認知症テキストブック(中外医学社)
DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(医学書院)
カプラン臨床精神医学テキスト(メディカルサイエンスインターナショナル)

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